アジア太平洋地域は、台風や洪水、地震、津波などの自然災害により多くの被害を受けています。人口や社会・経済、地理的な要因により、世界の他の地域と比較して災害に脆弱であり、実に、自然災害による世界の全被災者数の90%を占めています。アジア太平洋地域の防災体制の強化が大きな課題となっているのです。
そんな中アジア太平洋地域では、地球観測衛星などの宇宙技術を防災分野で活用し、その被害を軽減するために、様々な国際協力を行っています。その象徴的な存在が、現在、20ヵ国52機関、8国際機関が参加する「センチネルアジア」です。
センチネルアジアは2005年に日本で開かれた宇宙機関の国際会議、APRSAFで提唱されたもので、アジア太平洋地域で災害が発生した際に、極めて広い地域を見渡せる衛星観測を被害状況の早期把握や防災活動に役立てる活動です。センチネルアジアの事務局は、日本の宇宙航空研究開発機構が務めています。

2008年2月には、日本の超高速インターネット衛星、WINDSも打ち上げられました。
毎秒1.2ギガビットという世界最高速の通信能力があり、ブロードバンド環境の整っていないアジア太平洋の地域や島々に対しても、地球局を設置すれば、日本から配信された衛星のデータを受信することが可能になります。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
立川敬二理事長
タイ国家地理情報宇宙技術開発機関(GISTDA)
トンチャイ・チャルパット長官
我が国の衛星、THEOSのデータが、センチネルアジアをサポートしています。洪水や地滑り、森林火災、干ばつ、津波、地震など深刻な災害が他の国で発生した場合、私たち、タイがサポートします。
タイ国家地理情報宇宙技術開発機関(GISTDA)
チャンチャイ・ピヤンウイジャーンポン副長官
我々が、WIDNSからのデータを受信し、各国へ提供しています。WINDSは非常に高速な通信ができる為、地球観測衛星からのデータを直ちに他の国々に配布することを可能にしています。高速通信はアジア諸国にとって非常に重要なことなのです。
ベトナム科学技術院(VAST)
グェン・ディン・ゾンサン所長
去年センチネルアジアから得たPALSARデータは、どのようにして洪水が起きるのか、また、内陸からより効率的に排水するにはどうしたら良いのかといったことを理解する上でまたとない情報源となりました。これを見ることによって、排水によって減った水の量が計算でき、そこからポンプ場の排水システムの能力を推定して、それが十分であったかどうか、どこを改善すべきかなどを検討することができたのです。
ベトナム国立リモートセンシングセンター
チャン・トゥワン・ゴク副所長
センチネルアジアは、ベトナムのような発展途上国でも自由に観測データを受け取ることができ、そのデータを使って国における災害問題を管理し、軽減することができるのです。センチネルアジアは、とても良い考えで素晴らしい構想だと思います。
アジア防災センター(ADRC)
鈴木弘二所長
調査などを踏まえて申しますと、非常時の対応だけではなくて、災害が起こる前のその段階で衛星技術をどう活用するか、あるいは起こった後、復興過程でどう活用されるかという風な、そういった面でますますその技術力とシステムの構築をしていっていただければ、もっともっと大きな貢献ができるのかなという風に期待しているところであります。
ラオスリモートセンシングセンター(RSC)
ヴィラニー・センチアン所長
衛星画像を使って、どこの地域が被害を受け、何人の人々が被災したかを知るために、データを解析し、災害対応を担う政府などの関連機関に提出しました。近い将来、センチネルアジアは私たちにとても役立つと考えています。
アジア工科大学院ジオインフォーマティックスセンター(GIC)
ラル・サマラコーン所長
我々の周辺にある幾つかの国は、私の知るところ、衛星からのデータ解析を未だ独自で容易にできません。彼らがその能力を身につけるまで、我々が代わりに解析しなければなりません。彼らが能力を高めるには、しばらく時間がかかるでしょう。ですので、彼らが自らの手で解析できるまで、私たちが、防災活動に役立つ質の高いデータや解析結果を提供していきたいと考えています。
アラスカ大学国際北極圏研究センター
福田正己教授

どの火災がどこで起こったか、なかなか掌握できない。広域的で一度に起こる。それを地上ではなく、宇宙の目でいち早く検知して、またその結果に基づいてどの火災を一番最初に消火すべきかということを判断しようと。それによって火災による被害を最小に食い止める。それがセンチネルの主な目的ですね。実は地球上ではアフリカと南米でも同じように火災が深刻化していますので、ここで確立した手法や、技術が世界的にも役立ってくるだろうと期待されています。
水資源・環境庁(WREA)
モンマニー・ニョイブアコン長官
第4回目センチネルアジア・システム運用研修をようやくラオスで開催できて非常に光栄に思っています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)バンコク駐在員事務所
水元伸一所長
災害を軽減させる為に我々は、衛星からの地球観測を含め、あらゆる方法を駆使すべきです。また、センチネルアジアでの協力も推し進めなければなりません。
■ 訓練に参加した各国の参加者のインタビュー
インド宇宙研究機関(ISRO)
G. シリンワサ・ラオ講師
アジア太平洋地域の国々のほとんどは、宇宙からの情報を自分たちで入手する術がありません。ですから、センチネルアジア構想は間違いなくそれらの国々の手助けとなります。
ブータン災害管理局
ラーチー・デマさん
私は災害管理の仕事をしているので、ここで学んだことを国に帰って役立てることができます。衛星技術を利用したこの研修は、我が国にとっても有益なものだと思います。
スリランカ災害管理センター
シルマル・サマンシリさん
私はスリランカの防災管理センターに務めています。スリランカで発生する災害の全てを管理している唯一の組織ですが、2006年の津波の後に設立されたものでまだ歴史は浅いのです。研修で学んだプログラムや技術は必ず同僚や他のスタッフに伝えていこうと思っています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
立川敬二理事長
現在、インド、韓国、タイの3カ国が地球観測衛星による情報を提供して頂いており、感謝しています。日本もさらに観測網を充実させていきます。
国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)
ノエリーン・ヘイザー事務局長
最終的に私たちは、技術を適切に使っていかなければなりません。そしてその技術は、人々の幸せや発展の為になるものでなければいけません。それは、地球上でネットワークを作るだけでなく、地球の外からも地球や地域社会とネットワークさせる新しい方法です。一般的に、人との繋がりやパートナーシップというものを考えるとそれは、グローバルなのものや、地域間や地域社会のものと捉えがちですが、今、これに新しいレベルが加わったのです。それが宇宙技術です。


衛星からの情報を積極的に活用し、災害対策に役立ててもらうには、国際的な宇宙機関や防災機関の連携が何より重要です。人道的な立場で、国境を超えて相互に災害被害の軽減を目指して協力し合う関係の構築です。